コロナウイルスの影響で、実体経済の停滞が深刻さを増しています
日本のみならず、世界規模です
なにしろ、いまだに飛行機もろくに飛んでいない
すべての局面で、対面から非対面へと経済活動や社会活動がシフトしています
ANAなど、エアラインの例を挙げるまでもなく、他業種で資本性ローンを注入しただとか、大規模リストラをおこなうとか、そんなニュースには事欠きません
そんななかにあって、ここ最近、人気を集めているのが、「FIRE本」です
FIRE本といわれても、そもそもFIREって何?
FIREとは、
Financial
Independence
Retaire
Early
このワードの頭文字をとって、F,I,R,Eと読んでいます
つまり、「経済的な自立」により、「早期の引退」を目指すというライフスタイルです
FIREを目指すにあたっては、支出の最適化、つまりムダ使いや不必要な出費を極力抑えることが重要なポイントになります
その在り方が、今話題の「ミニマリスト」にも通じたりして、若い社会人から、中高年にいたるまで、FIREは幅広い層に注目されています
そんななか、FIREのバイブルとされる本が、ここ最近で、立て続けに出版されているのです
人気に火を付けたのが、
グラント・サバティエの
「FIRE 最速で経済的自由を実現する方法」です
ご存知の方もいるかもしれません
カバーにも刺激的なコメントがあります
日本円で250円程を、5年で1億3千万までに増やしたと聞けば、興味を持たされるのも当然です
その後、出版界で話題となったのが、クリスティー・シェンとブライス・リャンによる
「FIRE 最強の早期リタイア術」です
この本は、クリスティー本などと呼ばれます
この本に限らず、FIRE本に共通するのは、筆者たちが30代(というか、ほぼ30歳)でFIREを実現していることです
そして、もう一冊
FIREを考えるうえで欠かせない「日本代表」がいます
それが、「三菱サラリーマン」さんです
「三菱サラリーマンが株式投資でセミリタイアを目指してみた」というブログを書いているので、知っている方も多いでしょう
この方、セミリタイアどころか、もう完全なリタイアに突入しています
ちなみに、まだ30歳という若さです
三菱サラリーマンさんが、穂高唯希のペンネームで出版したのが、
「本気でFIREをめざす人のための資産形成入門」です
先に紹介した2冊が和訳されたように、この本もいつか、世界的なFIRE本の一角として、海外の書店に並ぶ日がくるかも知れません
これら、FIRE本が示すライフスタイルですが、
30歳そこそこでFIREを達成した彼らには、いくつかの共通点があります
早期引退後の収入を、不労所得、そのなかでも株式の値上がり益(キャピタルゲイン)や、配当収入(インカムゲイン)を中心に据えています
サバティエやクリスティーは、おもにSP500などのインデックスに投資しています
穂高さんはそのあたり、HDVやVYM、SPYDなどの高配当米国株ETFや、個別の高配当銘柄を軸に考えているようです
また、クリスティーは、ポートフォリオに債権を組み入れているのに比べ、サバティエや穂高さんは、株式がメインですね
この3人、あくまで株式投資が中心で、不動産投資にはあまり触れていないのも特徴ですね
しかし、ポートフォリオ以前の問題として、彼らには、もっと大きな「共通点」があります
この3人に共通するのは、FIREに突入するにあたって、相当の自己資金を準備したということです
先ほども触れましたが、クリスティーは250円から、1億3千万円に増やし、FIREを実現しました
サバティエは、日本円で、だいたい8千万くらいでしょうか
穂高さんは、7千万円です
クリスティー 1億3,000万円
サバティエ 8,000万円
穂高 唯希 7,000万円
さらっと書いていますが、FIRE生活を始めるには、こういう、まとまった「種銭」が必要となります
FIREを考えるにあたって、ここに大きな壁があるのです
なぜ、種銭が必要なのか?
それは、彼らが株式から収入を得ようとしているからです
「4%ルール」を耳にされたことはあるでしょうか?
株式運用から得られる利益については、おおむね年利4%を目安にする
つまり、100万円を株式投資すれば、だいたいですが1年間で4万円のリターンを見込むというものです
これをもとに逆算すると分かることがあります
穂高さんの例から考えると、7,000万円の原資を4%運用すると、1年間で280万円。月額にすると約24万円になります
つまり、1ヶ月の生活コストを24万円以内におさめると、単月で収支が黒字になります
原資が5,000万円になると、4%ルールで年利200万円になります
家族構成や、望む生活スタイルにもよりますが、原資が少ないと、当然ですが毎月の生活予算も少なくせざるを得ません
また、投資リターンを上げようとすると、どうしてもリスクを取らざるを得なくなります
さきほど、クリスティーが、投資ポートフォリオに債権を組み入れていると述べましたが、これは彼女の投資原資が大きいので、保守的なアロケーションにすることが可能と言えるかもしれません
ここまで述べたモデルでFIREを試みようとすると、どうしても「まとまった」原資が必要になります
これだけの高額を一般の日本人が蓄えるのは、簡単なことではありません
昨年、金融庁の報告書で話題となった「老後2千万円問題」ですが、
ここで問題の声が上がったのは、いきなり2千万円必要と言われても困る、というものですね
これが、巷の意見の趨勢だったと感じています
日本の、2人以上の世帯の、貯蓄額の中央値が330万円。単身だと100万円ともいわれます
であれば、彼らFIREの実現者たちが用意した7千万円以上の原資を作っていくというのは、そう簡単にできることでもないように思います
長期にわたる年月をかけて資産を作っていく
実際、3人のなかでは、もっとも早くFIREしたクリスティーでも5年掛かっています
サバティエは9年。穂高さんも約10年です
この間、支出を抑え、節約に徹する
なかなかのことです
これが嫌なら、「一発」当てるしかない苦笑
つまり、ギャンブルに持ち込む。テンバガーを2発取りに行くくらいの気合と運が求められるでしょう
FIREを目指す人にとって、ここに大きな壁があるのです
とはいえ、3人が提唱する「FIRE」に、再現性がないと言いたいのではありません
むしろ、彼らが人生の中で、何を取捨選択し、これから何を大切にして生きていこうと考えているか
そういったことに思いをめぐらせると、
そこには、我々が生きていくうえでも、大きな示唆があると感じます
自分(や家族)が、どんな人生を送りたいのかという、根源的な問題とも関わるテーマでもあるし、
これまで、学校を出て、定年まで働いて、老後は年金で生きるという、
ある意味紋切り型、ステレオタイプともいえる生き方から、
複層的な、より柔軟なライフスタイルを生きていこうとする者にとって、「FIRE」が、かなりのヒントをくれる
そんな気もしています