日本の企業が、海外で優秀な人材を集められなくなっているという事実
製造部品の供給が止まってしまう、いわゆるサプライチェーンの寸断ももちろんなのですが、
慢性的な問題として、優秀な現地スタッフを集められなくなっているのです
何故なのでしょうか
今日はその理由を考えてみます
この問題を考えるという事は、今騒がれている、日本での雇用流動化、「ジョブ型雇用」への移行についても考えることにつながるのかと思います
共同通信系の海外サイト、NNAから「優秀人材の採用に苦戦する日系企業 その原因と対策は?」2020.8.26を参考にします
給与設定が決定的に低い
なんといっても、日系企業に現地の優秀なスタッフが集まらなくなった最大の理由は、給与が安いことです
現地の労働者が、日系企業の給与が安いことを理由に、中国など他国の現地法人を転職先として選択するのは、もはや当たり前のことです
海外では、日本と比較にならないくらい転職が一般的です
転職の大きな理由はさらなる賃金の向上です
その望みを、日本企業でかなえることが難しくなってきています
日本だと、転職をしても前職の給与を上回る事が、現実問題としてなかなか難しい場合があるかもしれません
良くて現状維持とか、場合によっては大きく下げることもあり得ます
しかし海外では賃金増を目指すのは、ごく当たり前のことです
転職イコール、キャリアアップに他ならないからです
つまり、転職者に好条件を提示できないということになると、日本企業はおのずと選択肢から外れます
これはアジア諸国で見られる現象であって、マネージャー職以上の有能な人材になればなるほど採用が難しくなると言われています
日本では10年以上、働き手の賃金伸び悩みが話題になって久しいですが、
その理屈を海外に持ち込んだ日系企業の現地法人は、現地の転職者から相手にされなくなりつつあります
二つ目の問題は、転職者が納得できる十分なステータスを準備することがなかなかできない
海外で働くと分かるのですが、
「マネージャー」や「バイスプレジデント」、「スーパーバイザー」といった、日本人からすると大変に重い(高い)ステータスを持つ労働者は、意外と多い
日本だと、転職すると、場合によっては「肩書なし」のヒラ社員から再出発するケースも少なくないでしょう
一方、海外ではそのような考え方は、基本的にあまり通用しません
つまり、誰もなかなか入社してくれません
なぜ今までのステータスをゼロ評価されるのか、外国人は理解できないでしょう
これまでの職業人生を認めてもらえないと感じたなら、そのような会社に誰が入社するでしょうか?
さらによく聞くのは、採用面接時にやたら細かく、やたら厳しく、ハードルの高い面接試験を行う場合が多いようです
慎重と言えば言葉は良いのでしょうが、ただでさえ条件が良くない日系企業に、そんな高いハードルを課して、誰が入社してきてくれるのでしょうか?
そのうえ、日本語というマイナー言語を強いられるとかいう事にでもなれば、もういい加減にしてくれということになるのも仕方ありません
ここで、日本を振り返りたいのですが、
雇用の流動性などと謳われながら、今なお日本での転職は海外と比べて流動化しているとはとても言えない状況です
そんな中で、ジョブ型雇用への転換などと言葉だけを上滑りさせても、システムとして定着させる事は困難を極めるでしょう
これまで日本で、
企業と働き手が何を約束し、何をお互い守ってきたのかをもう一度振り返らなければ、雇用システムの転換は単なる言葉遊びで終わっていくことだと思います
海外とは異なり、
これまで日本型システムで働いてきたビジネスマンにとって、メンバーシップ制からいきなりジョブ型雇用への転換専門的スキルの重視などと言われてどのように対応できるのでしょうか
ジョブ型雇用を、企業の利益からしか考えない企業、つまり、
社員切捨てでやっていけると考える企業は、早晩消えるでしょう
企業だけの利潤を考えるあまり、働き手の気持ちを踏みつけるような企業は、海外だけでなく日本でもいずれ相手にされなくなるのではないでしょうか
「新しい働き方」に対応できていないのは、働き手だけの問題ではなく、実は企業側にとっても同じことなのです
なので、今日本の会社で働く人は、マスコミなどが声高に言うことに、必要以上に怯える必要はない
確かに、自らのスキルを武器に働く時代、いずれ来るでしょう。しかし、それは働き手のニーズをも十分に捉えたものでなければなりません
コロナ禍のこのタイミング、我々は将来の雇用に必要以上に動揺するのではなく、ぜひ自分を見つめることに時間を使いましょう
逆に、働き方や働く会社を、こちらが選んでやる、自分でコントロールしてやる、くらいの気持ちが大切なのかなと思います