日本を賑わす「老後資金問題」ですが、発展途上国で同様の問題が起こっているのか、考えます
今回は、東南アジアのフィリピンと、日本との比較で考えてみます
①経済的には豊かなのに、日本はなぜ幸福度が低いのか?
両国の、一人当たりのGDPを比較してみます
一人当たりDGPとは、一人が生み出す付加価値額のことです
一般的にGDPが大きいほど、経済的に豊かであるとされています
日本は、一人当たり39,305USドル。約400万円といったところです
一方、フィリピンは、3,103ドル。約30万円を超えたくらいです
日本とフィリピンでは、ゆうに10倍以上の差があるのが現実です
しかし、
世界の幸福度ランキングでは、フィリピンはフィジーに次ぐ、世界第2位です
日本はというと、58位に留まっています
なぜなのでしょう?
明確な理由があると、僕は思っています
②日本人はみんな、人生に不安を感じている
今、日本人はみんな、自分の人生に不安を感じて生きていると思っています
その最たるものは、老後資金の問題です
この、答えがあるようで実は明確ではない悩みに、老いも若きも苦しんでいます
では、日本より経済的にははるかに厳しいフィリピンの人々には、老後資金問題はないのでしょうか?
おそらく、あまり深刻には考えられていないのではないかと考えます
それには、はっきりとした「理由」があります
③家族主義のフィリピン人と、個人主義化が進む日本人
フィリピン人は、家族を大切にします
親を敬います
若者は、働いた給料を、何はさておき親元に送金します
これが、当たり前のことになっています
兄弟を助けることも、当然のことです
おそらくですが、
例えば、フィリピンの家族においては、一族の中に際立って勉強ができる子がいた場合、その子に教育費をつぎ込みます
もはや、投資にも似た感覚でしょう
その子は、優秀な大学に進学し、卒業後は大手企業に就職します
所得格差の激しいフィリピンでは、大手企業でキャリアとして働くことが、つまりアッパークラスに属することを意味します
得た給料は、一族を支えるために送金されます
英語が堪能なフィリピン人の職場は、世界にわたります
医師としてアメリカに渡る者もいれば、エンジニアとして中東で働く者もいる
メイドとして働く女性も多い
彼らは、OFWと呼ばれ、フィリピンの重要な外貨獲得手段と考えられています
実は、フィリピン人の女性には、10代で出産を経験する者も多い
子どもを育てるのは、親元に暮らす両親や、兄弟などの家族です
母親は、マニラなどの都会や海外で稼ぐ場合も多い
つまり、
家族単位で、働ける者は働き、子どものケアをする者もいて、上手く有機的に支える仕組みが出来ている
ただし一方で、家族主義からの逸脱は、習慣上からも宗教上からも難しい
それがフィリピンだと思います
一方の日本はどうでしょうか
核家族化という言葉がありますが、もはやそれどころか、結婚もしないし、子どももつくらない
個人主義が加速度を増しているように感じます
大家族全体で支えあうことを忘れた日本人は、今それどころか、家族というユニットを維持することすら難しくなっています
老後も同様です
いまどき、息子や娘がいたとしても、彼らに生活の面倒を見てもらおうというシニア世代は、ごく少数でしょう
家族という意識がどんどん希薄になっていく日本では、結婚し家庭を持つということが、幻想になりつつあります
経済面しかり、精神面にしても、広い意味での家族全体で支えあう意識が現代の日本人にはあまりない
しかし、結局のところ日本という国が、個人の自由が尊重される国に成熟してきたとも考えられる
農耕民族社会に強く見られる、古い家族制度に縛られなくなりつつある、
それによって得たもの、裏腹にあるものをどのように考えるかということでしょうか
もちろん、フィリピンにおける医療の値段は決して安くありません
平均寿命が60歳余りの国なので、そもそも老後の問題が顕在化していない。日本のように長寿命化していない
そういう面はあると思います
しかし、老後の在り方が議論になるこの国で、人としてどのように生き切るのか考えるのは、大切なことだと思うのです