Another skyを探す旅

激変する世界を生きるヒント。それは自分の足元にある

継続のコツは「藤井弁当」にある。シンプルなしくみ作りが大切

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どんな物事であっても、継続するにはシンプルなしくみにしてしまうことが大切です

 

どんな世界でも、何かを継続するのは大変なことです

 

場合によっては何年も何十年も続ける。並大抵のことではありません

 

どうすれば、続くか?

 

重要なヒントが「藤井弁当」にあります

 

 

 

お弁当のレシピ本なのですが、この本の真骨頂は、

お弁当作りを、ぎりぎりまで削ぎ落とされたフォーマットに仕立てられている

ことにあると感じます

 

今日は、料理研究家 藤井恵さんの著書「藤井弁当」から、なにかを継続するために大切なコツについて考えます

 

 

 

ワンパターンを追求する「藤井弁当」

 

 

お弁当作りというのは、主婦にとってなかなか避けては通れない家事のひとつです

 

それも毎日、暑い日も寒い日も、体調が悪い日もです

 

著書である藤井恵さんは、娘さんのために15年間お弁当作りを続けてきました

 

そのなかから、無駄な動線を排除した、シンプルに徹したノウハウが「藤井弁当」にまとめられています

 

藤井さんは、「ワンパターン」という言葉で表現していますが、

 

ここでいうワンパターンとは、お弁当を作るうえで、ルールが定められていることです

 

まず、使用する調理器具は「卵焼き器」のみ

 

卵焼きを焼くときに便利な四角いフライパン、ですね

 

そして、おかずは3品と決められています

 

主要な食材も3品に絞られます

 

まず、卵焼き器を使ってお湯を沸かします。野菜を茹で、それを一品としてしまいます

 

次に、同じ卵焼き器で卵焼きを作ります。これで二品ができます

 

最後に、肉か魚で主菜を作ります。同じく卵焼き器を使います。これで三品が完成します

 

それぞれの料理にバリエーションを加えることはあっても、基本の動線は変わりません

 

この動線こそが、藤井さんが15年かけて完成させた究極の動線です

 

毎日作らなくてはいけない。しかも、誰も代わってくれない

 

そんな毎日の中で、いかに作り手のストレスを減らし、なおかつ食べる側の満足度が高いお弁当を作れるか?

 

いきついた結論が、シンプルな動線にあったということです

 

 

 

「しくみ作り」の大切さ

 

著者の藤井さんは、ワンパターンという言葉で表現していますが、

 

考えてみると、仕事であれスポーツであれ、「しくみ」を決めている人は意外と多いものです

 

人によっては、フォーマットと呼んでみたり、ルーティンと言ったりします

 

しくみを作っておくと、毎日いちいち頭で作業内容を組み立てなくても、ある程度の安定度を維持しながら動くことができます

 

多少荒削りでも、とりあえず「毎日のしくみ」をつくってしまう

 

それを少しずつ洗練させていけば良いのではないでしょうか。藤井さんが15年掛けて完成させたように

 

しくみを作ってしまえば、頭が疲れることも少なくなるはずです。考えなくてもよくなるから

 

効率良く仕立てられた仕組みによって生まれた、頭と体と時間のバッファを別のことに振り向ける

 

そこまでいくと、仕事でも毎日の生活でも、ずいぶんと楽に生きられる気がします

 

 

 

スポーツ選手のルーティン

 

スポーツ選手で「ルーティン」を持つ人は少なくないといわれます

 

イチロー選手が現役時代、試合の前にカレーを食べていたのは有名です

 

また、バッターボックスに立つまで、一連の「所作」を持っていました

 

スポーツ選手というのは、いうまでもなく結果がすべての世界に生きています

 

シーズン中、うまくいっている時期もあれば、そうではない時期もある

 

メンタル的にどんなに苦しいときでも、好調なときであっても、ルーティンを崩すことはしない

 

自分ではどうにもできない「波」に、自らの心も飲み込まれていては、安定感のある成績など出せるものではありません

 

「しくみ」作りには、行動の最適化だけではなく、心を最適化させる効果もあると考えるのですが、いかがでしょうか?

 

 

 

 

今週のお題「傘」

報われないこともある…。結局のところ「努力」ってなんだ?

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今日は、報われないこともある「努力」について考えます

 

 

 

 

 

努力が報われるとは限らない

 

 

私たちは、毎日生きていますが、楽しいことばかりではないです

 

 

というか、つらいことのほうが多かったりもする

 

 

そんな現状を、少しでも改善しようと思って、人は努力をします

 

 

でも、努力が必ずしも報われるとは限らない

 

 

やるせない思いをしたことがあるのは、僕だけではないはずです

 

 

日本人は真面目だから、努力は美徳だと考えますね

 

 

では、外国人が努力をしないかというと、それは違う

 

 

 

「努力できる」ということ

 

 

努力とは、いったい何なのか?

 

 

物事がうまくいかないときは、特に考えますね

 

 

ユング心理学の大家であった故河合隼雄先生は、おっしゃってます

「ものごとは努力によって解決しない」

 

 

努力しても、うまくいかない。誰も認めてくれない

 

 

私たちは、そんな苦しみのなかに生きていますね

 

 

では、努力など、最初からしないほうが、むしろいいのか?

 

 

それは違う、と僕は思います

 

 

先生も、たぶんそんなことはおっしゃってない

 

 

確かに

仮に努力したところで、報われるかどうかなんて分からない

 

 

けれど、私たち人間は、せめて努力ぐらいしか出来ることがない

 

 

だから、やる

 

 

努力することによって、心の平静を手に入れようと、もがく

 

 

結果はどうなるか分からないが、自分から選んで努力をさせていただく

 

 

努力が出来ることに感謝する

 

 

結果がどうとか、まして他人に認められるかとか、関係ない

 

 

自分が努力したいから、やるだけ

 

 

こんなことを、自分の判断基準にすれば、少しは心が軽くなるでしょうかね

 

 

始めるときの判断基準。答えはすでに自分が知っている

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4月に入り、生活が大きく変わった人もいるでしょう

 

学生なら、進学。卒業したら、就職。会社員なら、異動。

まあ自営であれば、日々が激変でしょうから。

 

人生の大きな節目とまでいかなくても、この時期は新しく何かを手掛けたり、とかく新しい風が吹きやすい時期でもあります

 

少しコロナの勢いが落ちつけば、なおのことです

 

みずから新しいことに取り組んでみる。人との接触が制限されてきた時代にあって、そのような気持ちを持てることは素晴らしい

 

では、どのように「新しいこと」を自分で選ぶか

 

大事にしたいのは「違和感」を感じるかどうかではないでしょうかね

 

最初の取り掛かりで感じた違和感というものは、またいつかその先で再び感じる事が多い。倍くらいの問題になって噴き出してくる。これを実感した人もいるでしょう

 

スタートで違和感を感じるということは、つまり言い換えると、どこかで自分の心が「無理」を感じている。そういう可能性があります

 

やってみないと分からない。たしかに、それも事実ではある

 

しかしですが、おそらく自分の心は、すでに答えを知っているのですよ

大切な判断をするとき、何をたよりに決めればいいのか。それは、自分の「直感」です

 

春の心地よい気候のなか、自分が気持ちよく歩ける一本道がすっきり見通せた。

もし、そういう感覚を持てたとすれば、それをとにかく大切にするということです

 

 

「強そうなやつ」の内実が、めちゃくちゃ弱いと分かる瞬間

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世の中には、強そうな人や、勢いがあるように見える人、粋がっている人、

そういう、他者から見て「優位性を誇示」しているようにみえる人がいます

 

それが、本人にとって自然体なのかどうかは分かりません

 

しかし、その人の強さがどこから来るのかを冷静に見極めると、それは意外とハリボテのような嘘と虚構だっただけ、などということがある

 

世界には、そんなことが本当によくあるように思うのです

 

例えば、

目下、他国への侵攻を断行中のロシア

 

訓練された、世界有数の戦闘力を誇る軍隊。のはずだったロシア軍。

化けの皮、ではないが、実戦で作戦通りに進まず軍に大量の戦死者が出ている現在、それを信じる人はどれだけいるか

 

いま、ロシアをめぐっては、プーチンと周辺の意思決定プロセスに問題があるのではないかともいわれます

 

要するに、プーチンは裸の王様で、取り巻きが都合の悪い情報を報告していない

そのような状況下でプーチンは大統領として、バイアスの掛かった情報のみによって判断を下している

 

皇帝と呼ばれ、長期にわたって独裁を続けてきたプーチンですが、

恐ろしく早い意思決定によって、西側諸国がマネできないスピードで政策を打てる。こともある。つまり、良いときはめちゃくちゃ強い

 

しかし、いったんほころびが出始めると、一気に転がり落ちる

 

先日、権威主義をめぐるパワーバランスということで、記事を書きましたけど

そういう意味では中国も同じですね

 

www.glocal2019.com

 

 

 

良いときは強い。だが、一旦悪くなると転げ落ちるのも早い

 

権威主義とはどういうものなのか。今、リアルタイムに我々は見ているのですね

 

強いと思っていたものなんて、意外とそうでもなかった。我々のまわりは、そんなことであふれているんです

 

「あたりまえ」に流されず、しっかりと見極めていきたいですね

 

 

コロナと経済覇権、そして戦争。 「権威主義」をめぐるパワーバランス③

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「華僑」と聞くと、どんなイメージを持つでしょうか?

 

中国出身のお金持ち、商売上手、といった感じでしょうか

 

フィリピンほど、華僑が幅を利かせる国もあまりないのではないかと思います

 

今日は、フィリピンという国をモデルにして、政治と華僑のつながり、そして大国である中国とアジアの周辺国の関係性について考えてみます

 

 

 

今日が、3回目になります。今日で記事は最終回です

 

 

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フィリピンの大統領、ドゥテルテが中華にルーツを持つという話は、前述しました

 

おばあさんが、中国出身者なのです

 

なので、ドゥテルテ自身、中国語が理解できるらしい

 

このおばあさん、中国のなかでも福建省の出身だというのです

 

といっても、フィリピンに多くいる中国人で、福建出身というのは少なくないはずです

 

なんといっても、華僑といえば、福建出身者が多いことで有名です

チャイニーズ・マフィア蛇頭もそうですかね

 

フィリピンには多くの財閥がありますが、中華系のルーツを持つ財閥は多い

新興財閥の多くは、華僑です

 

2020.8.4の日本経済新聞に「フィリピン財閥、勢力変動」という記事がありました

 

サブタイトルは、「大統領が敵視、ロペス弱体化」です

 

今、ドゥテルテ政権は財閥解体を掲げて、既存の産業、特にインフラの改革に着手しているとされますが、放送局ABS-CBNをはじめ、通信などインフラ産業を標的にしています

これらは、許認可事業が多いのが特徴です

 

もともとフィリピン政府というのは、国家財政が潤沢ではないので、民間にインフラ産業を委託することで国内の基盤を整備してきました

 

なので、電気料金が高めなのも、運営しているのが民間会社ゆえとも言われます

 

一方で、財閥としても政治に近づいて、利権を確保したい

 

それを考えると、華僑と大統領が近づくうえで、同じく福建にルーツを持つことが、有利に働いても不思議ではありません

 

もともと、経済的に有力な支持基盤に乏しかったドゥテルテですから、多くの財閥が触手を伸ばし、大統領も優遇を図ってきた

 

そのなかで、選挙時にドゥテルテを支持しなかったスパニッシュ系(親米が多い)が冷遇され、華僑が良い目を受けたとしても、まったく不思議はありません

 

 

 

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オバマに散々な暴言を吐いたドゥテルテですが、それはオバマ政権が末期だったからこそです

 

トランプに対しては、少なくとも大統領個人としては、好印象をアピールしてきました

 

あたかも、北朝鮮金正恩が、トランプとの個人的相性の良さをアピールしたのに近いものがあるかもしれません

 

一方で、当時のアキノ政権が仲裁裁判所に申し立てた、南シナ海の「スカボロー礁」に関する仲裁ですが、

 

裁判所が中国の主張を、国際法違反として退けたにも関わらず、ドゥテルテは問題を「棚上げしてもよい」と発言し、世界からいぶかしがられました

 

ドゥテルテの発言は、一見するとフィリピンの国益に反しているように感じます

 

しかし、その背景には、フィリピンの置かれた立場、そしてドゥテルテ自身の立場が深く影響しているように思います

 

それにしても、ドゥテルテというのは、ほんとうに「狂犬」のような人物なのか?

 

なんとなく、壊れそうな細い橋をビビって渡る茶番にしか見えないのは私だけでしょうか?

 

 

 

 

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コロナ感染の問題をとってみても、そもそもの感染源である中国への対応は各国で差がありました

 

カンボジアのフン・セン首相などは、感染拡大後も中国に対して非常に親和的な態度をみせ、世界を驚かせました

 

東南アジアや、アフリカもそうだと思いますが、中国に対し、経済的依存度が高い国は、政治の世界でも中国に対しシンパシーを表明してきました

 

 

フィリピンも例外ではなく、中国企業や中国人の数が急増しています

 

特に、フィリピンでは、POBOと呼ばれるオンライン・カジノに携わる中国人が増えていたのです

 

マニラ首都圏には「中国人向け」のチャイニーズレストランがかなりの数あります。現地を知る方はお分かりの通りです

 

濫立するコンドミニアムも、購入者は中国人や中国資本が多いといわれています

 

 

日本は、ODAという政府開発援助で発展途上国のインフラ整備に寄与してきました

 

最近の中国も、一帯一路やAIIBアジアインフラ投資銀行に代表される、政府援助というかたちで途上国のインフラ開発の「支援」が増加しています

 

しかし、ここが中国の「えげつない」ところなのですね

 

有償援助では、債務不履行にいたった場合、港湾などを代物で返済させるということをやる。つまり、インフラ整備した港などを、中国が取り上げるということです

 

ここのえげつなさに、いまさら途上国が気付いたということです

 

 

 

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しかし、ここ数年、アジアはじめ途上国はコロナウイルスに苦しんできました

 

フィリピンなどは、感染者を食い止められず、度々厳しい外出制限措置が敷かれてきました

 

ただでさえ弱い経済が、このままでは持たない。そこまで追い込まれていた

 

コロナによる経済活動の停滞、そしてここに来て米欧ではインフレ懸念が高まっています

 

 

ウクライナ問題で動向には不透明感が伴ないますが、それでも米FRB政策金利の段階的引き上げをせざるを得ない状況でしょう

 

ドル買い、自国通貨安とデフォルトリスク

新興国のなかには、国家財政に重大な懸念が生じる先も増えてくるでしょう

 

 

 

コロナ禍のドゥテルテは内心、生きた心地がしなかったでしょう

 

経済的に苦しむ民衆と、対策を打てない政府

 

民衆の支持を失えば、文字通り「死」が見えてくるのがドゥテルテという人物です

 

なにしろ、理由はどうあれ多くの市民を殺していますから

麻薬撲滅と称した大量殺人などと言われてきました。そんな彼を民衆と、次の政権が許すかどうかが結果的に問われることになる

 

 

今年5月に大統領選挙があります。

親中姿勢とは一線を画す候補もいます。現在の副大統領ロブレド、ボクサーのマニー・パッキャオ...

二人ともドゥテルテとはソリが合いません

 

とにかくドゥテルテにしてみれば、自分に近い立場であるマルコスの息子が大統領に当選し、娘のサラが副大統領になるのが、自分の身を守るために必須なのです

 

そしておそらくですが、次の次はサラが大統領の本命に名乗り出る

 

まあ、そこまで先のことは誰にも見通せないのですが

 

 

そして、こういう政権に「手を差し伸べてきた」のが、中国であり、さらにはロシアだったのです

 

もっとも、中国製のワクチン「シノバック」はフィリピン人でも打ちたがらなかったようですが

 

世界各国が自国の対策で手一杯のタイミングで弱い国に近づく勢力

 

そして、いざとなれば武力行使も辞さない

 

もちろん、支援自体は批判されるべきものではないでしょうが、そこに高い代償が伴うとなると話は別です

 

 

第二次大戦後、東南アジアの国々は、外国勢力に対して厳しい規制を定めてきました

 

外資規制と呼ばれます

外国人の土地所有は当然のこと、法人設立時の出資割合などを厳格化することなどで、兵器だけではなく経済によっても、再びの植民地化を牽制してきました

 

しかし、多くの国が苦境にある現在をとらえて、政府、民間の垣根を越え、経済的、ときに武力による現状変更を目論む国があることは注視すべきと思います

 

 

いつか通った、かたちを変えた帝国主義と侵略の足音に、途上国がどう対処できるか。

 

フィリピンにとって日本は、かつての「宗主国」でもあります

そして、この地域は第二次大戦時の日本にとって要衝でもあり、南シナ海は、多くの特攻隊員が亡くなった激戦地でした

 

敗戦後、この地域の国々と、小石を積むように関係の再構築を図ってきた日本にとっても、ロシア中国の問題、南シナ海の問題を他人事にしないということが大切ではないかと思っています

 

多くの人が指摘する通り、

ウクライナで起こっていることが、明日、我々日本人の足元で起こったとしても、何の不思議もない

 

我々が気付く、気付かないに関係なく、事はすでに静かに進んでいる。そう考えて間違いないと思っています

 

 

 

 

ここまで、3回に分けて東南アジア、特にフィリピンの目線から権威主義勢力、とりわけ中国をめぐる私見を書いてみましたが、なかなか思いをまとめるのは難しいと、今さらながら感じました

 

記事が、3回の長文になってしまいました汗

 

自分なりの見方なので、「違う」というところもあるかもしれませんが

 

長々と読んでいただき、ありがとうございました

 

 

 

華僑と財閥。 「権威主義」をめぐるパワーバランス②

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目下戦争を起こしているロシアは言うに及ばずですが、

 

ここ数年とくに、中国が、香港の国家安全維持法といい、台湾問題といい、日本の尖閣といい、なにかと世界から「問題視」されます

 

特に台湾、そして尖閣諸島の問題は、一歩間違うと日本を当事者国とする戦争にも繋がりかねない危険を孕んでいます

 

 

その中国について、周囲を取り巻く環境から考えてみようと思いました

 


 

今日は、その2回目になります

 

中国の周辺国であり、南シナ海の領土問題、特にスカボロー礁をめぐるあつれきで世界的に注目されているフィリピンを起点に考えてみます

 

 

 

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ドゥテルテ大統領が、フィリピンの最大規模の放送局であるABS-CBNを閉鎖に追い込んだのは前述しました

 

ABS-CBNを持っているのは、フィリピンのなかでも有力財閥の一角であるロペス財閥です

 

フィリピンには大小多くの富裕層一族が存在し、ひとくくりに「財閥」といっても線引きがあるかと聞かれると難しい

 

ただし、ロペス一族については、1850年頃を起源とする、フィリピンでは最も歴史のある財閥であることに異論はないはずです

 

先日の①の記事で、

アキノ前大統領が、ロペス財閥の総帥であるマヌエル・ロペス氏に駐日特命全権大使を委任したことにふれました

 

アキノ大統領にしてみれば、日本はフィリピンにとって最も重要な支援国です

日本の大使というのは、同国にとって非常に高いステータスになります

 

ロペス氏にとっても、実業家が本業ですから、東京に張り付いて政治の世界に関わるというのは、大変なことです

 

そこを考えただけでも、アキノ大統領とロペス氏の関係がうかがえます

 

 

ロペス財閥は、確かに歴史ある財閥なのですが、フィリピンで「歴史ある」というだけで、いろんなことが推測できます

 

ロペス財閥は、スパニッシュ系の系譜を持っています。つまり、フィリピンで歴史があるということは、かつての宗主国であるスペインと深く関わるということでもあります

 

フィリピンは、かつてスペインの植民地だった国です

 

そもそも、「フィリピン」という国名からして、スペインの皇太子「フェリペ」に由来するといわれています

 

余談になりますが、フィリピンのマカティ市に「アヤラ・ミュージアム」という博物館があります。フィリピンを訪れた方であれば、知っているかもしれません

 

このミュージアムの展示物を見学すると、あることに気付きます

フィリピンの「歴史」が、16世紀からスタートしているのです

つまり、スペインの植民地となってからが、極端な話ですが、フィリピンの歴史のスタートとして認識されている

 

それ以前の時代は、原住民の時代、なのですね

 

アヤラ・ミュージアムの「アヤラ」も、最有力財閥の一角です

 

アヤラ財閥は、不動産に強みを持つと言われ、他にもBPIという銀行や、水道事業、グローブ・テレコムという携帯通信事業など、インフラをおさえています

 

アヤラ財閥も、スペイン系財閥ですね

 

 

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スペイン系財閥と別に「分類」されるのが、中華系の財閥です

 

いわゆる「華僑」です

 

華僑の代表格といってもいいのが、シー財閥です

 

BDOというフィリピン最大の銀行や5位のチャイナバンキング、不動産、デパートやスーパーなどの小売など、最大級のコングロマリットを形成しています

 

この財閥の創業者が、伝説的な逸話を持つ人なのですが、ヘンリー・シーという、もう亡くなりましたが、フィリピンで一番の大金持ちでした

 

この人物が、靴屋の丁稚から財を築いたのが、シー財閥です

 

フィリピンで、SMデパートといえば、知らない人はいません

SMというのは、シュー・マートつまり靴屋を意味します

 

「モール・オブ・アジア」や、「SMメガ・モール」など、とにかくフィリピンには巨大ショッピングモールがいくつもあります

 

ほかにも、ゴコンウェイや、GT(ティー財閥)、コンスンジ、サンミゲルの創始者コファンコなど、中華系については枚挙にいとまがありません

 

スパニッシュとは対照的に、多くが新興であり、しかしながら商才によって拡大を続けています

 

 

 

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ドゥテルテの話に戻りますが、

ドゥテルテという人物は、ミンダナオのダバオ市長を長年務めた人です

 

ダバオというのは、フィリピンでは3番目に大きな規模を持つ都市ではあるのですが、といっても中央のマニラからは距離も遠い

 

フィリピンの中央政界や財界に人脈を築いてきたという人物ではありません

 

しかし意外なのが、ドゥテルテには「中華」の血が流れているということです

 

あまり取り上げられることがないのですが、実はドゥテルテは、中国語を理解できるらしい

 

話すことはできないまでも、言っていることは何となく理解できる

そういうレベルらしいのです

 

本当に、フィリピンというのは、こういう人が多いのですよ

 

そもそも、タガログ語と英語はみんな話せますから、それに加えていくつかの言語を知っているという人は、少なくない

 

 

ドゥテルテと華僑についての考察は、③で

ぜひ、引き続きご覧いただければ

 

キーワードは、「福建」にあります

 

 

テレビ局をつぶす。「権威主義」をめぐるパワーバランス①

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今、中国ロシアに代表される権威主義と呼ばれる勢力と、西側と呼ばれる民主主義勢力とのあつれきが顕在化しています

 

我々は、ロシアがウクライナに侵攻するという、21世紀の出来事とは信じがたい光景を目の当たりにしています

 

戦争の先行きは見通せません

 

中国に対する懸念も高まっています

 

 

香港の民主化運動家の弾圧など、やりたい放題にも見える中国共産党の所業に、嫌悪感を持つ人も多いでしょう

 

そして、中国が香港の次に触手を伸ばすのは、間違いなく台湾と言われています

 

 

 

中国をめぐるパワーバランスといっても、さまざまな側面からとらえることができるでしょうが、

今回は自分の考えを整理する意味もあって、自分なりの切り口で書いてみます

 

今回は、南シナ海、特にスカボロー礁と呼ばれる海域の周辺である東南アジアの目線からアプローチしてみます

 

長くなるので3回に分けて記事にします

今日は、1回目です

 

 

 

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フィリピンという国の、人々の間で親しまれてきたお昼の番組があります

 

日本でいうところの、「ヒルナンデス」的な存在と言えばいいのか

 

司会がバイス・ガンダという、フィリピンでは「バクラ」日本では「オカマ」なのですが、当地では誰もが知っている存在です

 


It's Showtime Station ID

 

しかし今、この番組は放送されていません

 

番組どころか、テレビ局そのものが完全にクローズしてしまったのです

 

2020年7月のことです

 

 

フィリピンに、ABS-CBNというテレビ局があります

 

フィリピンで最大規模とされる民放局です

 

このテレビ局が25年に一度の放送免許更新を迎えていたのですが、ドゥテルテ政権が更新を許可しなかったのです

 

ドゥテルテというのは、フィリピンの現大統領です

 

放送免許が更新できないので、当然ながら番組を放映することはできません

 

ABSーCBNは当然、窮地に追い込まれました。今はインターネットによる配信に活路を見出そうとしているようです

 

 

 

 

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なぜ、ドゥテルテ大統領は放送免許を許可しなかったのか?

 

さまざまな憶測があるのですが、

 

ドゥテルテは2016年6月に、大多数の国民の支持を得て大統領選挙に当選したのですが、この際、ABSーCBNが反ドゥテルテの報道をおこなったとされています

 

さらに、ドゥテルテが一般市民の殺害を伴う過激なやり方で麻薬撲滅を推進したのは、世界的なニュースになりました

 

この一連のやり方にも、批判的な報道をしてきたのが、このテレビ局です

 

麻薬撲滅をめぐっては、当時の米大統領であるオバマとやり合ったのを記憶の方もいるかもしれません

 

ドゥテルテは、徹底的にオバマを個人攻撃しました

 

このことをきっかけに、ドゥテルテは世界から「狂犬」などと呼ばれるようになり、またトランプ大統領が当選したのちには、「東南アジアのトランプ」とも言われました

 

ドゥテルテの出所は、ミンダナオ島のダバオという都市です。ここで長年ダバオ市長を務め、現在は娘のサラ・ドゥテルテが市長になっています

ちなみに、サラは、次の副大統領候補の最有力と目されています

 

そして、大統領の最有力とされているのがボンボン・マルコスの愛称で知られる、かつてのマルコス大統領の息子です

 

ドゥテルテと近い関係にあるとも言われています

 

 

ダバオという「田舎」出身のドゥテルテには、財政的に有力な支援母体がなかったともいわれます

資金力でのし上がったというよりも、ダバオでの「むちゃくちゃ」ぶりが、国民に受けて大統領にのし上がったというほうが、むしろ適切かもしれません

 

貧富の差が歴然としているフィリピンに、むちゃくちゃなドゥテルテが大統領になれば、どうしようもない閉塞感に風穴を開けてくれるかもしれない

 

富める者はひたすら富み、貧しい者は絶対に這い上がれない

それが、フィリピンという国の現実です

 

なので、当初はダークホース扱いでしかなかったにもかかわらず、選挙終盤は国民運動的な盛り上がりで圧倒的支持で当選してしまったのです

 

ドゥテルテの前任大統領といえば、アキノ大統領です

 

アキノといっても、お母さんも大統領経験者です。お父さんは、着陸直後の飛行機のタラップで暗殺され、今も国民的英雄であるベニグノ・アキノ・ジュニアになります

この事件をきっかけに「ピープルパワー革命」が起こり、当時のマルコス大統領は選挙で敗北し、アメリカに事実上の亡命を余儀なくされます

マルコスの時代を知らない方でも、イメルダ夫人といえば聞いたことがあるかもしれません

多くの人が貧困に苦しむフィリピンで、3,000足の靴のコレクションは、いろんな意味で有名になりました

 

アキノ政権というのは、お母さんが大統領の時代もそうなのですが、親米政権です

 

まあ当時は、今ほどに中国の力が台頭していなかったので、フィリピンが経済的に発展するにはアメリカ、そして日本の力が不可欠だったのですね

 

では、ドゥテルテ政権は「親米」なのか、それとも「親中」なのか?

 

それについては、今後さらに考えます

 

 

 

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ところで、ドゥテルテが当選した選挙の話ですが、このとき、アキノ前大統領は、彼を支持してはいなかったのです

 

別の候補を後継者として支持していたものの、結果は前述のとおりです

 

実は、アキノ前大統領と放送局ABS-CBNを経営するロペス一族は、長年にわたってかなり近い関係にありました

 

その一例として、

 

アキノ大統領は、彼が政権を担っていた間、マヌエル・ロペスという人物を、重要な支援国である日本の大使に任命しています

 

この人物こそが、ロペス一族、つまりロペス財閥の総帥なのです

 

 

 

僕はこの頃、ロペス大使と少しだけ話をしたことがあります

 

東京都内です

エレベーターの中で、

 

そのときは冬だったので、クリスマスの話をされたのを今でも覚えています。ユーモアがあって温和な方という印象を受けました

 

そのロペス氏が率いるテレビ局、ABS-CBNを、今、いわば兵糧攻めにしたのがドゥテルテ大統領です

 

いくら選挙で不利な報道をされたからといって、なぜドゥテルテは放送局そのものを潰そうとまでしたのか?

 

以前、NHKの日曜夕方6時の「これでわかった!世界のいま」でもテーマに取り上げられていました

ドゥテルテのやり方が報道の自由を侵し、独裁的という論調でした。坂下千里子さんも、なんかこわい、とコメントしていました

 

しかしですが、この事件、よくよく考えてみるといろんな背景が見えてくるのです

 

そのひとつが、「華僑」の問題です

 

続きは次回にしたいと思います