Another skyを探す旅

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テレビ局をつぶす。「権威主義」をめぐるパワーバランス①

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今、中国ロシアに代表される権威主義と呼ばれる勢力と、西側と呼ばれる民主主義勢力とのあつれきが顕在化しています

 

我々は、ロシアがウクライナに侵攻するという、21世紀の出来事とは信じがたい光景を目の当たりにしています

 

戦争の先行きは見通せません

 

中国に対する懸念も高まっています

 

 

香港の民主化運動家の弾圧など、やりたい放題にも見える中国共産党の所業に、嫌悪感を持つ人も多いでしょう

 

そして、中国が香港の次に触手を伸ばすのは、間違いなく台湾と言われています

 

 

 

中国をめぐるパワーバランスといっても、さまざまな側面からとらえることができるでしょうが、

今回は自分の考えを整理する意味もあって、自分なりの切り口で書いてみます

 

今回は、南シナ海、特にスカボロー礁と呼ばれる海域の周辺である東南アジアの目線からアプローチしてみます

 

長くなるので3回に分けて記事にします

今日は、1回目です

 

 

 

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フィリピンという国の、人々の間で親しまれてきたお昼の番組があります

 

日本でいうところの、「ヒルナンデス」的な存在と言えばいいのか

 

司会がバイス・ガンダという、フィリピンでは「バクラ」日本では「オカマ」なのですが、当地では誰もが知っている存在です

 


It's Showtime Station ID

 

しかし今、この番組は放送されていません

 

番組どころか、テレビ局そのものが完全にクローズしてしまったのです

 

2020年7月のことです

 

 

フィリピンに、ABS-CBNというテレビ局があります

 

フィリピンで最大規模とされる民放局です

 

このテレビ局が25年に一度の放送免許更新を迎えていたのですが、ドゥテルテ政権が更新を許可しなかったのです

 

ドゥテルテというのは、フィリピンの現大統領です

 

放送免許が更新できないので、当然ながら番組を放映することはできません

 

ABSーCBNは当然、窮地に追い込まれました。今はインターネットによる配信に活路を見出そうとしているようです

 

 

 

 

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なぜ、ドゥテルテ大統領は放送免許を許可しなかったのか?

 

さまざまな憶測があるのですが、

 

ドゥテルテは2016年6月に、大多数の国民の支持を得て大統領選挙に当選したのですが、この際、ABSーCBNが反ドゥテルテの報道をおこなったとされています

 

さらに、ドゥテルテが一般市民の殺害を伴う過激なやり方で麻薬撲滅を推進したのは、世界的なニュースになりました

 

この一連のやり方にも、批判的な報道をしてきたのが、このテレビ局です

 

麻薬撲滅をめぐっては、当時の米大統領であるオバマとやり合ったのを記憶の方もいるかもしれません

 

ドゥテルテは、徹底的にオバマを個人攻撃しました

 

このことをきっかけに、ドゥテルテは世界から「狂犬」などと呼ばれるようになり、またトランプ大統領が当選したのちには、「東南アジアのトランプ」とも言われました

 

ドゥテルテの出所は、ミンダナオ島のダバオという都市です。ここで長年ダバオ市長を務め、現在は娘のサラ・ドゥテルテが市長になっています

ちなみに、サラは、次の副大統領候補の最有力と目されています

 

そして、大統領の最有力とされているのがボンボン・マルコスの愛称で知られる、かつてのマルコス大統領の息子です

 

ドゥテルテと近い関係にあるとも言われています

 

 

ダバオという「田舎」出身のドゥテルテには、財政的に有力な支援母体がなかったともいわれます

資金力でのし上がったというよりも、ダバオでの「むちゃくちゃ」ぶりが、国民に受けて大統領にのし上がったというほうが、むしろ適切かもしれません

 

貧富の差が歴然としているフィリピンに、むちゃくちゃなドゥテルテが大統領になれば、どうしようもない閉塞感に風穴を開けてくれるかもしれない

 

富める者はひたすら富み、貧しい者は絶対に這い上がれない

それが、フィリピンという国の現実です

 

なので、当初はダークホース扱いでしかなかったにもかかわらず、選挙終盤は国民運動的な盛り上がりで圧倒的支持で当選してしまったのです

 

ドゥテルテの前任大統領といえば、アキノ大統領です

 

アキノといっても、お母さんも大統領経験者です。お父さんは、着陸直後の飛行機のタラップで暗殺され、今も国民的英雄であるベニグノ・アキノ・ジュニアになります

この事件をきっかけに「ピープルパワー革命」が起こり、当時のマルコス大統領は選挙で敗北し、アメリカに事実上の亡命を余儀なくされます

マルコスの時代を知らない方でも、イメルダ夫人といえば聞いたことがあるかもしれません

多くの人が貧困に苦しむフィリピンで、3,000足の靴のコレクションは、いろんな意味で有名になりました

 

アキノ政権というのは、お母さんが大統領の時代もそうなのですが、親米政権です

 

まあ当時は、今ほどに中国の力が台頭していなかったので、フィリピンが経済的に発展するにはアメリカ、そして日本の力が不可欠だったのですね

 

では、ドゥテルテ政権は「親米」なのか、それとも「親中」なのか?

 

それについては、今後さらに考えます

 

 

 

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ところで、ドゥテルテが当選した選挙の話ですが、このとき、アキノ前大統領は、彼を支持してはいなかったのです

 

別の候補を後継者として支持していたものの、結果は前述のとおりです

 

実は、アキノ前大統領と放送局ABS-CBNを経営するロペス一族は、長年にわたってかなり近い関係にありました

 

その一例として、

 

アキノ大統領は、彼が政権を担っていた間、マヌエル・ロペスという人物を、重要な支援国である日本の大使に任命しています

 

この人物こそが、ロペス一族、つまりロペス財閥の総帥なのです

 

 

 

僕はこの頃、ロペス大使と少しだけ話をしたことがあります

 

東京都内です

エレベーターの中で、

 

そのときは冬だったので、クリスマスの話をされたのを今でも覚えています。ユーモアがあって温和な方という印象を受けました

 

そのロペス氏が率いるテレビ局、ABS-CBNを、今、いわば兵糧攻めにしたのがドゥテルテ大統領です

 

いくら選挙で不利な報道をされたからといって、なぜドゥテルテは放送局そのものを潰そうとまでしたのか?

 

以前、NHKの日曜夕方6時の「これでわかった!世界のいま」でもテーマに取り上げられていました

ドゥテルテのやり方が報道の自由を侵し、独裁的という論調でした。坂下千里子さんも、なんかこわい、とコメントしていました

 

しかしですが、この事件、よくよく考えてみるといろんな背景が見えてくるのです

 

そのひとつが、「華僑」の問題です

 

続きは次回にしたいと思います