コロナ禍の影響は、経済活動にも影を落としつつあります
とかく日本で注目されているのは、運輸業や旅行業、飲食業、小売、サービスといった分野の不振です
しかし、日本経済を牽引してきた製造業にとっても、受ける影響は大きいものがあります
今日は、自動車産業を例にとって、製造業が置かれている苦境について考えてみます
共同通信系の海外ニュースサイトNNAの記事2020.4.20を参考にします
生産拠点としてのマレーシア
日本企業にとって、東南アジアは中国に次いで、生産拠点が集積する地域です
そのなかで、マレーシアは約1,400社の日系企業が進出しているといわれています
(JETRO調べ)
そのうち、半数が製造業とされています
日本への輸出額は、2019年のデータで約1.6兆円になります
いま、大手製造業では、海外で自社製品を最終組み立てまで行うことが一般化しています
製品化のために、多くの日系の協力会社(サプライヤー)が海外進出しており、ASEAN域内でサプライ・チェーンが構築されています
マレーシアにおける日系企業の現地部品調達率は2018年のデータで36.1%と、直近でベトナム(36.3%)に越されたものの、タイ(57.2%)やインドネシア(42%)などに次ぐ水準となっています
そんなASEANにおいても、例に漏れずコロナ禍が影響を及ぼしています
マレーシアの感染者数は約5700人(4月25日時点)、死者数は100人弱です
世界的に見て、封じ込めに成功している国のひとつといえます
そんなマレーシアでも、国家緊急事態宣言が発令されています。
3月18日から5月12日まで、すべての国からの入国が制限されています
また、すべてのマレーシア人の海外渡航が禁止されています
マレーシア全土に、活動制限令(ロックダウン)が実施され、不可欠な事業以外の経済活動が制限されています
クアラルンプールに居を構えるGACKTさんが、テレビで現地の様子を話しているのを見た人も、いるかも知れません
再開に踏み切れない日系企業
そんなマレーシアにあって、活動制限令「フェーズ3」の特例として、実は貿易産業省から、自動車産業は操業再開を認められています
ただし、条件付きです
それは、「従業員がコロナ感染した場合、企業が医療費を全額負担する」というものです
これに、企業側が躊躇しているのです
従業員だけでなく、家族にまで感染がおよぶと、支払額は企業がまかなえる金額ではなくなります
また感染者が発生すると、企業イメージを毀損することにもなります
そもそも、仕入先や販売先がマレーシア国外であった場合など、同様に操業停止や自粛している場合があるため、結局のところ再開に踏み切れないということなのです
なので、結果的に発注の取り消しが集中するということになる
このまま操業停止が続けば、支払いを迫られる固定費(従業員給与や家賃など)負担に圧迫され、最悪の事態として現地法人のオペレーションが立ち行かなくなることもあり得る
つまり、サプライ・チェーンも崩壊するのです
コロナ禍の影響は、ほぼ全業種に及ぶ
早かれ遅かれ、コロナ禍の影響はほぼすべての業種に及ぶと考えます
ここまで人の動線が制限されると、いくら中央銀行が財政出動や金融支援をおこなったところで、どの程度の効果が得られるのかが見通しにくいのが現状ではないでしょうか
世界経済は、相当に深い泥沼に入り込んだと考えざるを得ない
そう思うと、飲食やサービスなど、すでに深刻な事態に陥っている業種だけではなく、今後、もっと多くの業種で危機が表面化するだろう。そんなことを感じないわけにいきません