毎週月曜日は、投資に関する記事を書いています。今週は少し目線を変えて、最近の住宅ローン事情について触れてみたいと思います。
最近、全国的に最長50年返済を売りにした住宅ローンが商品化されているようです。
この1年間で、10行以上が50年に対応している。
かつて住宅ローンといえば、長くても35年返済が最長でした。
例えば30歳で住宅を購入、ローンを最長35年で組んだとして、完済が65歳。これでも、以前は企業の退職年齢が一般に60歳とされていたことを考えると、残り5年はどうするの?という課題を感じる商品設計だったことは事実です。
しかし、今日的には、少子高齢化の波も相まって生涯働くという、定年廃止や再雇用を行う企業も随分と増えた。
65歳まで何らかのかたちで働くという人も増えたのです。ただし、賃金は何割か減った。そのような人も多いのですが。
そして今回の50年返済。
30歳を例にすると、完済時で80歳。
この時点で男性だと日本人の平均寿命81歳にほぼ等しい。
つまり、死ぬまでローンを払い続ける。
なぜ50年返済のローンが必要なのか?
それは、住宅の取得価格が上昇している影響が大きい。
日本経済新聞の記事(2023.9.7「住宅ローン 若者照準」)によると、2022年度の全国平均で分譲戸建て住宅の取得価格が4,214万円。
3年前と比較して1割価格が上昇しているようです。
また自己資金の平均額は1,160万円。
残り3,000万円は住宅ローンでということになるでしょう。もっとも、都心の物件を買うとなると、こんな金額で済むわけもありません。
まあ、1,160万円も自己資金で出せるというところは立派だとは思いますが、しかしこれとて平均値。中央値をとってみればおそらくもっと下がることになるでしょう。
どの若い世帯でも自己資金1,160万円を簡単にねん出できるとも思えません。
確かに、ローンの返済期間を延ばせば、毎月の返済額は低く抑えることができます。
しかし、当然ながらしわ寄せは後年にまわすことになる。
加えて、金利変動リスクも読み切れません。
日本の長期金利は上昇基調にあるので、住宅ローンの金利も上がる傾向にあります。
以前の記事にも書きましたが、住宅ローン利用者の大半が2年固定型など短期の金利設定を利用しています。
非礼を承知で言いますが、今もなお、金利に無頓着な人も多いのに、自己資金を別途プールして早々に一括返済と考える世帯がどれだけいるでしょうか?
また思っていたとしても、実際に実行できる人がどれだけいるのか?
住宅を購入しようとするのは、子育て世帯も多いのです。当然、教育費もかさんできます。
つまりは、高価な住宅を購入する。高額、長期の住宅ローンを組むということが、人生の大きな変数になり兼ねないのです。
住宅資金を調達するといえば住宅支援機構(かつては住宅金融公庫)を利用するのがかつても、今も選択肢のひとつです。
バブル前に流行っていたのが、「ゆとり返済」という返済方法です。
給料は右肩上がりで上昇する。そのような「神話」を妄信して、10年目以降の返済額を上昇させるプランがまかり通っていたのです。
結局、このプランを利用していた多くの人が、銀行で借り換えするか、さもなければ最悪、自己破産にまで追い込まれる。そのようなケースもあったのです。
今の若い世代は、そこまで日本の将来にバラ色な未来観を持っているとも思いませんが、しかし住宅産業というのが戦後日本の一大産業であり、多くの日本人世帯が新築住宅を持つことを夢見てきた。
また今の日本と世界では、中古住宅をめぐって評価基準に大きな差異がある。
いま、ここが大きなひずみを生んでいる。そのような気がします。
戦後以来続いた「当たり前」というのが、本当に今の自分たちにとっても「当たり前」とすべきなのか。ほかに選択肢はあるのか、ないのか。
これからを生きる日本人は、住宅に限らずですが、もっと発想を柔軟にする。
精神論を言うつもりはなくて、そうしなければ人生を棒に振りかねない。今の日本にそのような危うさ、気持ち悪さを感じています。