手元にある程度のお金はある。
そのような人であっても、いざFIREに踏み切るとなれば、なかなか決断がしにくいものです
理由はひとつではない。
ただ、そのなかでも大きな理由としては、
FIREに足るだけの「必要額」が読み切れない。この問題があると感じます
しっかりと全額を確認したわけではないものの、
なんとなく、手元にお金はある。
もしかしてFIREも可能なのだろうか?
そう思った人が、実際にFIREにいたるのは、まず無理です
もし、FIREを決断したにせよ、
その感覚は、ほぼ目隠しで崖から飛び降りるのに近いかもしれません
なぜなのか?
FIREというのは、言い換えると、今後の我々の生活、人生そのものに他なりません
特に、経済的な根拠が持てない状況では、不安だけが先行することになります
では、どうすれば良いのか?
その答えは、意外ですが「老後2,000万円問題」にあると思っています
公的年金だけでは、老後生きていくうえで十分な生活資金が確保できないかもしれない。
なので、一世帯当たり2,000万円は自己資金があることが望ましい
金融庁の審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書がきっかけとなり、社会的に大炎上した「老後2,000万円問題」ですが、
麻生財務相が報告書の受け取りを拒否したものの、なんの火消しにもならず、多くの人々に老後不安を明確に意識付ける結果となりました
この、2,000万円ですが、
算出根拠は総務省の「家計調査」のデータ。これにもとづき算出したところ、夫婦の老齢年金だけでは、家計支出が5.5万円の赤字になるという
日本人の寿命を踏まえると、
5.5万円 ✕ 12か月 ✕ 30年(余命) = 1,980万円
ということで、ニアイコール2,000万円が不足するかもしれないと言われたのです
60歳以上の無職世帯の、1か月あたり平均支出が22.3万円とされる。それとの差し引きですね
ここから考えなければならない問題として、
まず、
FIREするしないに関わらず、老後において何らかの手段で、生活資金を確保する必要がある
再就職やパートなどの労働や、資産運用をのぞけば、
預貯金の取り崩しだけでいくとするなら2,000万円は手元に用意する
(預貯金以外の手段が得られる場合、また支出を抑制できる場合は考慮せず)
これが準備できて、言い換えるとつまり、
老後2,000万円問題を払拭できた者が、はじめてFIREに挑戦する権利を得られるということになるのかも知れません
しかも、ここにはさらに大前提がある
それは、人生のライフイベントが考慮されていない点です
つまり、これから住宅を購入しようと考えている場合、住宅ローンの残債務がある場合、子どもがいて大学などの教育資金が必要となる場合は、
その充当額を加算して将来を考える必要がある
そうなると、じつはFIREというのは、そうとうにハードルが高い志(こころざし)なのかもしれません
最近FIREが世界的なムーブメントになりつつあることもあって、FIREに関する書籍やインターネット情報が増えた気がします
そういった情報を入手する際、考えると良いのが、
筆者の属性です
筆者が20代、30代の独身である場合、往々にして日本的な一般家庭のライフサイクルがあまり考慮されていない。考慮されていても、筆者自身の実体験がともなわないために、内容の深堀りがなされていない可能性があります
戦後から今日にいたるまでの、
受験勉強→進学→就職→結婚→住宅購入→子どもの進学→退職
といった、いわば日本人お決まりの人生を、かなりの長期間生きてきた中高年以降の人々にとっては、若くて独身でストイックなFIRE達成者である筆者の著述に、どこかしらの「不安」を感じてしまうのも無理からぬことなのです
なんといっても、爪に火をともす生活によって手に入れたギリギリの収支によるFIRE生活が、ライフサイクルによる大掛かりな出費により瓦解する可能性がある
これは、まずいことです
収入 > 支出
この原則を、絶対に堅持することが必要なのですが、人生にはときとして、そういかないときがあるものなのです
FIRE本の多くは、FIREを、
毎月のキャッシュフローから考える
これは間違っていないと思います
しかし一方で、
日本人の多くが不安に感じる老後2,000万円問題を起点とし、
そこに今後のライフサイクルを加味しつつ、
逆算的な視点からFIREを考えてみる
そのような思考があってもよいのではないでしょうか
FIREは軽々しく飛び込めるものではありません
中高齢者であればなおのこと
特にコロナ禍では、いったん辞めた職をもう一度得るのは困難を極めます